子どもがプログラミングを習っていると、「この経験は中学受験に役立つのだろうか」と気になる保護者は多いものです。必修化やプログラミング入試という言葉を耳にするたび、続けるべきか迷う方もいます。
とはいえ、中学受験とプログラミングの関係を、事実にもとづいて確かめたことのある人は意外と少ないものです。期待も不安も、たいていは「よくわからないまま」から生まれます。
この記事では、中学受験とプログラミングの関係から、受験期に続ける是非、受験しない選択との相性、そして中学以降の位置づけまでをまとめました。わが子の学年と志望に合わせて判断する材料として読み進めてみてください。
中学受験とプログラミングの関係
プログラミングと中学受験の関係は、場面によって近づいたり離れたりします。ここでは、入試・小学校教育・思考力の3つの観点から、両者のつながりを解説します。
| 観点 | 中学受験との関係 |
|---|---|
| プログラミング入試 | 一部の私立中で実施され、選べる学校は限定的 |
| 小学校の必修化 | 2020年度から全児童が授業で基礎に触れる |
| 思考力・論理力 | 手順を組む力が算数や思考力問題に波及する |
| 合否への直接効果 | 4科目の配点が中心で直接の効果は小さい |
プログラミング入試を実施する私立中学は一部に限られる
プログラミングだけで中学受験ができる学校は、実際に存在します。首都圏では駒込中学校や聖徳学園中学校、八王子実践中学校などが、プログラミング入試を採用しています。兵庫県の武庫川女子大学附属中学校など、地方でも導入する学校があらわれました。
ただし、こうした学校は中学受験の全体から見れば一部にとどまります。多くの学校は国語・算数・理科・社会の4科目型が中心で、プログラミングで受験できる枠は限られます。上の表のとおり、入試という入口は開いてはいるものの、選べる学校は多くありません。志望校がプログラミング入試を実施しているかどうかは、まず学校の募集要項で確かめてみてください。
小学校のプログラミング教育は2020年度に必修化された
小学校では、2020年度からプログラミング教育が必修になりました。文部科学省の新学習指導要領にもとづく変更で、すべての小学生が授業でプログラミングに触れます。
とはいえ、独立した教科が増えたわけではありません。算数や理科、総合的な学習の時間の中で、順序立てて考える力を育てる形が中心です。そのため、教室で習うプログラミングは学校の内容を先取りする位置づけになります。必修化は受験に直結しないものの、思考力を重んじる入試の流れと背景では重なっています。まずは学校でどのように扱われているかを、担任に確認しておきましょう。
プログラミング的思考は算数や思考力問題と重なる
プログラミングで身につく考え方は、算数の学びと近い部分があります。物事を手順に分け、条件で枝分かれを考え、うまくいかなければ試し直します。この進め方は、算数の論理や場合の数の考え方と重なるのです。
近年は思考力型や記述型の入試が増え、暗記だけでは解きにくい問題も出ます。手順を言葉にして筋道を立てる経験は、こうした問題に向き合う下地になります。ただし、プログラミングが直接出題されるわけではなく、あくまで下地づくりです。図形の作図や規則性の問題で、手順をたどって考える力がそのまま生きてきます。期待をふくらませすぎず、考える力を育てる一つの手段として取り入れてみてください。
プログラミングは中学受験の合否を直接は左右しない
習っているプログラミングが、そのまま合格につながるわけではありません。一般的な4科目入試では、配点は国語・算数・理科・社会に置かれ、プログラミング自体は採点の対象からは外れます。
プログラミングは、中学受験の合否を直接は左右しません。波及する効果はあっても、点数への直接の働きは小さいと見ておくのが正確です。「習っているから有利になる」という思い込みは、いったん外しておくほうが冷静に計画を立てられます。実際、多くの入試要項でも配点は4科目に置かれ、プログラミングの欄はありません。有利かどうかで悩むより、続ける時間があるかどうかへ話を戻してみてください。
中学受験期にプログラミングを続ける是非
プログラミングを続けるかどうかは、学年と生活時間によって答えが変わります。ここでは、中学受験の準備を進めながらプログラミングをどう扱うかを、時期別に解説します。
プログラミングを続けるかは、学年で優先順位が変わる。低学年は思考力の土台として続け、直前期は主要4科目に時間を寄せる。
低学年のうちはプログラミングが思考力の土台になる
3年生ごろまでは、受験勉強の密度がまだ高くなく、プログラミングに時間を割きやすい時期です。手順を組み立てて動かす経験は、後の算数の論理や、粘り強く試す姿勢につながります。
低学年のうちは、考える楽しさを優先してかまいません。この時期は「受験に効くか」で選ぶより、興味の芽を伸ばすほうが長い目で生きてきます。続けるつもりなら、時間に余裕のある低学年のうちに習慣づけておくと無理がありません。この時期に身につけた集中の仕方は、受験勉強が本格化してからも役に立ちます。まずは子どもが楽しめているかどうかを、そばで見て確かめてみましょう。
受験直前期は主要4科目を優先する
6年生の後半になると、過去問と弱点の補強に時間が集中します。新しい習い事を増やす余地は小さくなり、今ある予定の見直しが必要になります。
受験直前期は、主要4科目を最優先にします。プログラミングを続ける場合も、頻度を落とす判断が現実に合います。一度離れても学びは消えないため、直前期の休止も前向きな選択です。学習計画を書き出し、削れる時間から順に見直してみてください。
直前期に習い事を広げると、主要科目の勉強が薄くなりがちです。「せっかく続けたから」と手放せずにいると、肝心の4科目に手が回らなくなります。続けるか休むかは、子どもの様子と残り時間で決めてください。
週の学習時間からプログラミングの続け方を決める
続けられるかどうかは、気持ちより実際の時間で決まります。塾や宿題、睡眠にかかる時間を差し引き、残った時間でプログラミングが回るかどうかを見積もってみましょう。
書き出して時間が足りなければ、隔週に変える、長期休みにまとめるなど、頻度を落とす手もあります。大切なのは、親の期待で予定を詰め込まず、子どもの負担感を先に見ることです。短い時間で進められるタブレット学習などと組み合わせると、続けやすくなります。無理なく回せる分量に整えておくと、受験勉強との両立も長続きします。まずは1週間の予定を紙に書き出し、空き時間を確かめてみてください。
プログラミング入試という受験ルート
プログラミングを入試そのものに使うルートも、一部の学校では選べます。ここでは、プログラミング入試の中身と、準備で気をつける点を解説します。
プログラミング入試は自作作品や当日の課題で合否が決まる
プログラミング入試は、4科目のペーパーテストとは形式が大きく違います。自作したScratch作品の提出や、その場での制作と発表を通して評価する学校が中心です。
| 学校名 | 出題の形式 |
|---|---|
| 駒込中学校 | Scratchと算数や理科を組み合わせた課題 |
| 聖徳学園中学校 | マインクラフト内でのブロックづくり |
| 八王子実践中学校 | 自作Scratch作品を使った発表 |
学校ごとに課題も評価の軸も異なるため、志望校の要項を早めに読み込む必要があります。一般的なペーパー対策とは準備の方向が変わり、日ごろの制作経験がそのまま問われるのです。作品づくりに親しんでいる子ほど、当日の課題でも落ち着いて手を動かせます。志望校がどの形式で出すのかを確かめ、必要な準備を家庭で共有しておきましょう。
プログラミング入試の募集枠は少なく倍率も読みにくい
プログラミング入試の枠は、どの学校もそれほど大きくありません。募集人数が10名ほどの学校もあり、年度によって倍率が大きく動きます。
そのため、この入試を併願の主軸に据えるのは難しく、4科目型と組み合わせて計画する前提になります。枠が小さいぶん、確実に合格を取るための安全策にはなりにくい面もあるのです。過去の年度で実質倍率がどう動いたかを、学校の入試結果から調べておくと見通しが立ちます。入学者が定員に届かない年には、繰り上げの連絡が来る場合もあります。志望に入れる場合も、主軸ではなく挑戦の一枠として位置づけておきましょう。
プログラミング検定は一部校で出願条件や優遇になる
プログラミングの検定が、受験で役立つ場面も出てきます。ジュニア・プログラミング検定などの資格を、出願の条件や加点に使える学校が一部にあるのです。
ただし、こうした優遇はすべての学校に共通するわけではなく、対象は限られます。検定の級とそれを認める学校を先に調べ、取得が必要かどうかを見極める必要があります。志望校が決まらないうちに級だけを重ねても、受験で生きるとは限りません。検定は特定の学校に向けた準備で、受験全体の底上げにはつながりにくい面があります。まずは志望と検定の対応を確かめてから、受検するかどうかを決めてみてください。
中学受験をしない選択とプログラミングの相性
中学受験をしない選択と、プログラミングを続けることは相性のよい組み合わせです。ここでは、受験しない場合のプログラミングの活かし方を解説します。
中学受験をしない家庭はプログラミングに時間を割きやすい
中学受験をしない家庭には、受験勉強に取られない時間があります。その時間を使えば、プログラミングのような好きな分野を、腰を据えて続けられます。
受験しない時間は、プログラミングの継続に向いています。長期で積み上げるほど作品づくりの幅は広がり、学びの深さも増します。「受験しない=学びが薄い」ではなく、別の軸で力を伸ばす選択だと捉えておきましょう。焦って受験に合わせるより、子どもの興味に沿って伸ばすほうが力になります。得意を早くから深めた経験は、進路を選ぶときの強みとして残ります。受験するかどうかを迷っている段階なら、判断の材料をまとめた記事も合わせて読んでみてください。
公立中高一貫校の適性検査はプログラミング的思考と重なる
受験しない選択の中でも、公立中高一貫校を目指す道があります。適性検査型の入試は、知識の量より、論理や記述、思考力を問う傾向が強く出るのです。
手順を言葉にして筋道を立てる練習は、この適性検査の記述と親しい関係にあります。プログラミングで育つ考え方が、答えを組み立てる場面で生きてきます。ただし、適性検査でプログラミングそのものが出るわけではないため、期待は程よく持っておきましょう。作文や資料の読み取りで、考えを順序立てて書く練習の効果が表れてきます。志望に適性検査型がある家庭は、対策の進め方をオンライン塾なども使って比べてみてください。
受験しない選択とプログラミングの両立は家庭の方針で決める
受験するかしないかは、最後は家庭の方針と子どもの適性で決まります。プログラミングを学びの軸に据える家庭もあれば、受験を選ぶ家庭もあるでしょう。
大事なのは、どちらが正しいかではなく、子どもが伸びる場所を選ぶことです。親の焦りや周りの声で決めると、後から合わない方向へ進みがちです。まずは子どもがどんなときに集中し、何を楽しんでいるかを、普段の様子から見てみましょう。受験する場合としない場合の一日の過ごし方を、具体的に書き出して比べておきます。そのうえで、受験とプログラミングのどちらに時間を寄せるかを、家庭で話し合ってみてください。
中学受験後を見据えたプログラミングの位置づけ
プログラミングの学びは、中学受験の前後で途切れるものではありません。ここでは、中学以降を見据えたプログラミングの位置づけを解説します。
中学以降はプログラミングが教科として続く
小学校で必修になったプログラミングは、その先の学年でも続きます。中学校では2021年度から技術の授業で扱いが広がり、高校では2022年度に「情報Ⅰ」が必修になりました。
大学入学共通テストでも、2025年1月から「情報」が出題されるようになっています。小学校で終わる学びではなく、進学のたびに関わりが深まっていきます。早くから触れておいた経験は、中学以降の授業に入るときの助けになるのです。小学校から高校まで学びが積み重なる分、早い時期の理解が後の負担を軽くします。今の学びが先につながることを踏まえ、無理のない範囲で続けてみてください。
中学受験で身につけた学習習慣はプログラミング学習にも生きる
受験勉強で身につく力は、点数だけではありません。毎日机に向かう習慣や、難しい課題に粘り強く取り組む姿勢は、受験のあとも子どもの中に残ります。宿題を計画的に進めた経験は、学びを自分で管理する力として身につくのです。
この習慣は、プログラミング学習でも同じように役立ちます。手順を試しては直す作業には集中力が要り、受験で培ったペース配分がそのまま生きてきます。わからない問題を調べ、少しずつ解決へ近づく過程は、プログラミングの試行錯誤とよく似ています。学びを止めない習慣が、次の一歩を軽くします。受験の結果だけで判断せず、身についた力に目を向けてあげてください。
まとめ
中学受験とプログラミングの関係は、場面によって濃さが変わります。プログラミング入試を行う学校は一部にとどまり、通常の4科目入試では合否を直接は左右しません。一方で、手順を組む力は算数や思考力問題と重なり、2020年度に必修化された小学校の学びとも背景でつながります。
続けるかどうかは、学年と生活時間で判断するのが現実的です。低学年では思考力の土台として続け、直前期は主要4科目に時間を寄せると無理がありません。受験をしない選択とは相性がよく、時間を確保して長く積み上げられます。まずはわが子の予定を書き出し、続けられる時間があるかどうかを確かめることから始めてみてください。


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